130th 海城祭

海城の地面の下ってどうなってんの?

河野旺実(高1)

1.はじめに

こんにちは。高校1年の河野です。他の部員たちが水文系や天文系の分野を極めている中で、自分はのんびりといろんな分野に首突っ込んで過ごしています。

話は変わりますが、みなさんはこの海城学園にいらっしゃる際に新理科館(正式にはサイエンスセンターと言います。)をご覧になりましたか?次世代を象徴するような未来的な構造、科学教育に万全な実験室、その他様々な充実した設備が備わった新理科館ですが、実はこの校舎、「裏の顔」が地下にあることをご存知でしょうか?これは一部の関係者しか知らない事実で、外部からは秘匿とされている案件で…

と、怖い感じに言ってみたものの、実はそんなことは全くないのです(当たり前だ)。実は新理科館、工事が始まった頃に地面を掘ってみたところ、なんと関東ローム層が露出したのです。関東ローム層は受験で勉強済みかもしれませんが念のため説明しておきますと、関東平野一帯に広がっている火山灰の地層で、東京都の地盤で重要な役割を果たしております。そんなわけでコンクリートジャングルの新宿に現れたオアシスの如き生の地層が露出したものだから、この期を逃すまいとて、地学部員で露出した地層を「剥ぎ取って」保存し、地層の時代、名前やでき方などを調査しました。

2.概要

新理科館の地層は写真1のようになっており、上から順番に立川ローム層、武蔵野ローム層、下末吉ローム層、武蔵野礫層という順番になっています。この四つの地層の観察を通して分かったことをまとめていきます。

①立川ローム層

2.5万年前に形成されました。火山灰の供給源は富士山と箱根の火山からです。また、面白いことにこの地層では単子葉植物が発見されました。だからどうした…というわけなのですが、植物があるということは、当時そこが陸地であったということを示しているのです。こういった手法では地層の環境を推定するにあたってとても重要な証拠を見つけることができます。

②武蔵野ローム層

7~2.5万年前に形成されました。火山灰の供給源は立川ローム層と一緒なのですが、この地層、間に東京軽石層という地層が挟まっています。この地層は6万6千年前に箱根火山が大噴火して積もった地層なのですが、その規模は凄まじく、火砕流は横浜まで、つまり軽く30kmは移動してきたほどだと言われています。想像できないですね。

③凝灰質粘土層(下末吉ローム層)

 武蔵野ローム層が水と触れ合うことで二次変質したものなのか、はたまた別の地層名のかはよくわかっていない地層です。しかし、他の火山灰の地層よりも粘土質である点など、水分を多く含んでいることがわかりました。グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション, PowerPoint

自動的に生成された説明

④武蔵野礫層

武蔵野礫層は古多摩川の活動によって土砂が運ばれて堆積しました。写真を見ればわかる通り、地層自体が礫によって形成されていることがわかります。礫は重いので、河口からそう遠くない位置で堆積します。よって、この地層も同様に、海の近くで堆積したということがわかりました。

3.結果

以上、地層の年代と地層の中に見られた特徴を整理し、これを当時の東京の海面変動の図と照らし合わせていきます。当時の海水面は、地球の気候が変化するごとに頻繁に上下していました。そこからこの関東ローム層がどうやって作られていったのかを整理していきます。

①武蔵野礫層の形成

武蔵野礫層の形成については、先ほど話したように古多摩川からの土砂の流入で形成されました。また、当時の海水準はグラフを見ると低かったことがわかり、武蔵野礫層が形成されると同時に、川が地面を削って武蔵野段丘を作ったと言われています。グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

自動的に生成された説明

②下末吉ローム層

下末吉ローム層は水中で堆積したということが先ほどからわかりました。また、この時代は海水準が上昇している傾向にあったため、海水準が大幅に上昇していくと同時に火山灰が堆積し水分を含んだのではないかと推測しました。

③武蔵野ローム層

武蔵野ローム層からは東京軽石層が確認されるため、先述したとおり箱根火山の活動により火砕流が流れたとの記述があるので、おそらく陸地だったということが推測されます。また、海水準変動のグラフと照らし合わせてみると、当時は海水準が大幅に下降していることが確認されるので、辻褄が合うとわかります。

④立川ローム層

この地層に関しては③の武蔵野ローム層と堆積環境は同じであると言われています。(単子葉類の植物も発見されているので)。グラフ, ダイアグラム

中程度の精度で自動的に生成された説明

以上のような経過で、新理科館の関東ローム層一帯は堆積したと考えられます。

5.今後の課題

いかがでしたでしょうか。一見何でもないと思われる新宿の地面も、壮大な地球のドラマが隠されていたのです…。実際、「都会のアスファルトの下ってどうなってんの?」って聞かれた時に答えることができる人なんてほとんどいないと思います。しかし、そんな誰も知らない、普段は目にすることがないようなことでも、実は自分たちの生活の裏側にひっそりと潜んでいて、それらを突き詰めていけばいろいろなことが見えてくるのだと思います。まだ15年しか生きてませんけど。

あらゆる分野に手を出しすぎて中途半端に物事を知っている私が約四年間この海城地学部でわかったことを申し上げておきます。海城地学部が特筆するべきは、「一見自然科学とは程遠い”都会”からほんの少し手掛かりを覗かせている“地学”を、とことん突き詰めていくような研究活動をおこなっている」ことだと思います。これは関東ローム層の研究だけではなく、水文班の行っている地下水・湧水の研究でもおんなじことが言えると思います。

参考文献

関東ローム層と関東平野

https://www.kubota.co.jp/siryou/pr/urban/pdf/11/pdf/11_2_2.pdf 最終閲覧日 6月30日

参考写真
グラフ が含まれている画像

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