130th 海城祭

天文班の現在の活動について

河合輝彦(高1)

■夜空の明るさプロジェクト

皆さんは「光害」という言葉を聞いたことがありますか?光害とは、都市などにおける街灯や家などの光が外部に漏れることで夜空が照らされてしまうことを言います。海城中学高等学校がある新宿区では、町の光によって空が明るいせいで、天体観測が惑星や流星群などの明るいものや、日食、月食などしか観測できません。その光害は「SQM」という機械を使って調べます。このSQMは簡単に言うと、夜空の暗さを測る機械です。この装置とパソコンとをつなぐことでデータをパソコンに自動的に送って一定時間観測することができる、つまり無人でも一晩中夜空の明るさの変化を測ることができます。これを学校の屋上に設置することで季節による変化などがわかります。E:\地学部関連\IMGP1083.JPGE:\地学部関連\IMGP0722.JPG

■太陽電波観測プロジェクト

天文班の活動内容は主に星を観測することであるため、活動時間帯も夜間がメインとなっています。しかし、昼間でも天体を観測することができます。その天体とは、太陽です。現在、天文班では太陽電波の観測を行っています。太陽電波は、望遠鏡などを使って直接観測することはできません。そこで、衛星放送受信用のBSアンテナを用いて観測装置を自作し、太陽電波を観測しています。壁に掛けられた看板

中程度の精度で自動的に生成された説明

・装置の仕組み

①:太陽が発する電波をパラボラアンテナで観測します。この時、アンテナの角度は太陽光線と同じ角度(写真では12月のため30度)にしています。写真はおわん型のアンテナで電波を中央の部分に集めている様子です。

②しかし、太陽から受信して得られた信号はとても弱いので、BSブースター(増幅器)と呼ばれるもので増幅させます。この機械によって電波をより観測しやすくすることができます。座る, 小さい, テーブル, 横たわる が含まれている画像

自動的に生成された説明

③②で増幅させた信号はそのままでは解析することができません。そのため、観測することができる形に変換する必要があります。自作検波器で高周波の信号を直流の電流に整流し、これらを、テスターを用いて計測します。電子機器, 回路, メーター が含まれている画像

自動的に生成された説明

以上が装置の仕組みです。

観測の結果、アンテナを空に向けたときに受信した電波が2.3mVであったのに対し、太陽からの電波は最大で9.9mVと4倍程度の強さとなっていることがわかりました。また、アンテナの受信部に手をかざすと、電波が観測されたことから、人からも電波が出ていることがわかります。座る, 椅子, テーブル, 絨毯 が含まれている画像

自動的に生成された説明

オンライン天体観測会について

佐藤孝樹(中3)

■はじめに

ここでは、地学部が2020年から実施しているオンライン天体観測会(以下:観測会)の実施過程の説明をします。

この観測会は、今まで冬合宿の時くらいしか星を見なかった部員が、新型コロナウイルスの感染拡大で合宿ができない中でも、みんなで星空を見る機会を確保するために2020年9月から実施されているイベントです。2か月に1回ほどのペースで行われています。

■オンライン天体観測会の実施プロセス

①観測会の詳細決定

国立天文台のホームページや天文雑誌などを読んで、観測会はいつやるのか、何を観測するのかを決めます。ちなみに、第5回天体観測会以降は、下記の条件を満たす天文イベントがあるときだけ観測会を実施しています。

・高度15度以上の場所で起きること(建物が多い都会からだと見ることができなくなってしまうため)

・光度が2等級より明るい星の天体イベントであること(光害の関係から見ることができなくなってしまうため)

・頻繁に起こらないこと(部員が飽きるため)

・定期考査2週間前から最終日前日までに起こるイベントではないこと(部員の学業成績に影響させないため)

②参加者募集・望遠鏡の貸し出し

詳細が決定したら、天文班長・顧問からの許可を取り、部会の時などに観測会の詳細を発表します。そして参加者を募集し、希望者には学校の簡易的な望遠鏡とそれを固定する三脚を貸し出します。

③参考資料づくり

観測会が近づいてきたら、担当者が参考資料をつくり、部活内で共有します。参考資料は基本的に、メインイベントの概要と、その他の見どころの2つのページに分かれていて、前者では①で紹介した実施条件に当てはまる天文イベントの紹介、後者では季節の星座や少し暗い星などの紹介をしています。参考資料は天文の知識が少ない人でも見やすいようになっています。

④実施

そしていよいよ観測会です。観測会はZoomを使って行われ(第7回まではGoogle Meetを使用していました)、どの星がどのように見えるかの情報共有や撮った写真の共有もします。観測会は1時間くらいで終わるので気軽に参加できます。

⑤ホームページへの記事投稿・振り返り

観測会が終わると、部員に観測会時に撮った写真を送ってもらい、それを使って地学部ホームページに記事を投稿します(実際の記事はホームページをご覧ください)。観測会を数回実施したら、学校で振り返りを実施します。振り返りの際に使用するスライドは、観測会ごとに、メインイベントの概要、その他の見どころ、結果という構成になっていて、時々おまけコーナーやクイズコーナーが入っていて、楽しく振り返りをすることができます。

■まとめ

さて、ここまで長々と観測会実施プロセスについて見てきたのですが、これらのプロセスは第1~4回天体観測会の経験があってこそ決められたものとなっています。

例えば第2回天体観測会で極大から2か月も経っていて、とても暗い変光星ミラを見ようとしなければ、「光度2度以上」なんていう条件は設定できませんし(というか下調べも適当にやっていたことでしょう)、観測会の時に見えた火星は明るくなることが珍しいということがわかっていなくて、あまり丁寧に見なかったという経験が無かったら「参考資料づくり」ということは行われませんでした(詳しくは地学部ホームページにある第1~4回天文観測会振り返りの活動ログの記事をご覧ください)。このように、地学部では様々な取り組みを行い、その経験を活かしてより良くしようとする動きが活発です。このような取り組みに興味を持った方、また単純に星空を見るのが好きな方、オンライン天体観測会に興味を持った方はぜひ、海城中高地学部に入部してください。