130th 部誌

蜃気楼はなぜ起こるのか

下河邊太智(高1)

■蜃気楼とは

蜃気楼とは、地面(または海面)付近の空気とその上の空気の温度差が大きいときに、光が屈折したり反射したりことで遠くの景色が実際とは違うように見える現象のことです。光は、密度の低い暖かい空気であるほど速く進むため、上下方向の気温差が大きいところでは屈折により冷たい空気の側に曲がります。人は光が来た方向の先にものがあるように見えるので、実際の景色と違うように見えるのです。蜃気楼は、地面側が冷たいか暖かいかによって「下位蜃気楼」と「上位蜃気楼」に大別されます。ただし、全てがこのどちらかに含まれるというわけではなく、気温の状況によっては両者が同時に起こって複雑な蜃気楼になることもあります。

■上位蜃気楼ダイアグラム が含まれている画像

自動的に生成された説明

上位蜃気楼は、地面に近い下の方が上よりも冷たいときに起こります。見ている人に到達するまでに光が下側に曲げられるので、図1のように、景色が実際に見えるはずの位置よりも上側にずれて見えます。また場合によっては、図2のように像が上方に伸びたり、像が上方に反転して鏡に写ったように見えたりすることもあります。このような蜃気楼は珍しく、日本では富山湾や琵琶湖など限られた場所でしか出現しません。

例えば富山湾では春に上位蜃気楼が発生しやすく、特に魚津市は「蜃気楼の見える街」として有名で毎年10数回上位蜃気楼を観察することができます。一般的な大気の状態では高度が上がるほど気温が下がりますが、富山湾ではどのようにして下の方ほど冷たい状況が発生するのでしょうか。かつては、春に立山連峰の冷たい雪解け水が流れ込むことで海水温を下げ、海面付近の空気が冷やされて蜃気楼が発生すると考えられていました。しかし現在では、図3左のように、生地の陸上で急激に暖められた暖気が北からの海風にさらわれて、魚津市方面の海面上の比較的冷たい空気の上に流れ込むことによって、下が冷たく上が暖かい状況になると考えられています。ダイアグラム, 設計図

自動的に生成された説明ダイアグラム

自動的に生成された説明

■下位蜃気楼ダイアグラム が含まれている画像

自動的に生成された説明

下位蜃気楼は、これとは逆に、地面に近い下の方が上よりも暖かいときに起こります。図4のように、見ている人に到達するまでに光が上側に曲げられることで、景色が下側に伸びているように見えたり、下方に反転して見えたりします。下方に反転して見えると、図5のように地面がくっついて浮島のように見えることもあります。下位蜃気楼

夏に道路の遠くに水たまりがあるように見えるが近づいたら消えてしまうという「逃げ水」現象も下方蜃気楼の一種です。道路が太陽放射により熱せられることで下の方が暖かいという気温差が生じ、図6のように遠くの景色が水面に写ったように見えるようになる起こる現象です。

下方蜃気楼は上方蜃気楼と比べ頻繁に発生する現象で、海上では冬に発生しやすいとされています。これは、冬には空気よりも冷めにくい海水が相対的に暖かくなるため、海面に触れる空気は常に海水に暖められる状況となり、下が暖かく上が冷たいという気温差が生じるからです。また、下位蜃気楼は陸上でも起きることがあり、例えば砂漠では地面が太陽により強く熱せられるので、浮島状の蜃気楼や鏡のように反射した蜃気楼が見えることがあります。

参考文献一覧

  1. https://www.city.uozu.toyama.jp/nekkolnd/shinkiro/index.html

7月31日閲覧、要約

  1. https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020111400269/

7月31日閲覧、要約

  1. https://kitamirage.org/about-our-site/about-mirage/

7月31日閲覧、要約

  1. 木下正博・市瀬和義「富山湾における上位蜃気楼の発生理由」、2002年