アンモナイトを科学する
河野旺実(高1)
■はじめに
こんにちは。部誌をはじめから読んだ真面目なあなたはお久しぶりです。また会いましたね。このページから読み始めた猛者のあなたははじめまして。河野と申します。
皆さんは、化石と聞いたら何を想像しますか?小学生の読者は恐竜など、中学受験生の読者はサンゴ・アンモナイトなどの示準、示相化石を想像しますかね。その中でも、アンモナイトについて少しお話ししていけたらなと思います。
■アンモナイトの基本情報
・生息時代:古生代シルル紀~中生代白亜紀末
ざっくりいうと恐竜よりも前に生まれて、恐竜と一緒に絶滅したという感じです。長生きですね。
・生息地域:世界中の海洋
日本では北海道が世界的に有名な産地です。
アンモナイトの殻の内部は、アンモナイトの“体”が収まる住房と、浮くための気房に分けられています。また、吸い込んだ海水を吹き出して進む“ジェット”と呼ばれる構造もあったといわれています。
■アンモナイトはらせん構造?
本題に入ります。皆さんは、生物が数学と大きなかかわりを持っているということを聞いたことがありますでしょうか(例:ヒマワリの種とフィボナッチ数列)。アンモナイトにも実は、らせん構造という数学的な面白さを秘めています。
らせん構造とは、地球上に最も多く存在する規則的な構造で、生体内に存在するDNAやタンパク質といった生体高分子にも、この構造は数多く存在し、遺伝情報の記録や複製、生体内での酵素反応など様々な機能を発現するために重要な役割を果たしています。
一般にらせん構造は、左巻き、あるいは右巻きのどちらかに定まっている。たとえばDNAの二重らせん構造や、タンパク質を構成するαヘリックス構造は右巻き構造をとっており、右巻きと左巻きが入れ替わることはほとんどありません。
このように、皆さんの体は構成するDNAさえもらせん構造が深く関わっているのですから、らせん構造を知らずに生きていくなんてできませんよね。
では、アンモナイトはどのような形でらせん構造を形成しているのでしょうか。少し調べてみましょう。
■実験
用意するもの
・アンモナイト(モロッコ産)3個
・方眼紙
手順
- アンモナイトの中心を決め、方眼紙に点をプロットする。
- その点を原点として、x軸y軸と交わるアンモナイトの『線』の交点をプロットする。
■結果
結果は写真のようになりました。交わったアンモナイトのらせんと横軸の交点を小さい順に並べて計算をしていくと…
- の方のアンモナイトは2、3、7、10、15、22.5、33.75、49.125と、計算すると、1.5、2.3、1.4、1.5、2.3、1.3、1.5の倍率で大きくなっています。
- の方のアンモナイトは1、1.5、3.5、5、7.5、17.5、25、37.5と、計算すると、1.5、2.3、1.4、1.5、2.3、1.3、1.5の倍率で大きくなっています。
この倍率を比較してみると、中間で若干数値のばらつきは見られるものの、ほとんどの数値が酷似していることがわかります。よって、アンモナイトのらせんには、何かしらの規則性があることが見受けられます。
このようならせん構造はベルヌーイらせんと呼ばれています。このらせんに沿って隔壁と呼ばれる、ガスを充てんする部屋が作られていき、軟体部も殻の口の方へと移動していき、成長していくといわれています。
ちなみに、台風の雲の形もベルヌーイらせんであるといわれています。
公式は
という式で表すことができるそうですが、僕にはさっぱりわかりません。
ちなみにこの公式を証明する問題が神戸大で昔出たそうです。恐ろしい。
ただし、ここで覚えてほしいのは、ベルヌーイらせんは自己相似であるということです。自己相似というのは、任意の倍率で拡大または縮小したものは適当な回転によって元のらせんと一致することですが、わかりやすく言うと、どんなに大きく、もしくは小さくしたらせんも、回転させたりすれば元のらせんとぴったり重なる、ということです。
当然これはアンモナイトでも同じことが言えます。次の写真を見ると分かるかもしれませんが、この二つの重なっているアンモナイトも、自己相似を考えれば、いずれ成長することによって大きいほうのアンモナイトとぴったり重なるようになるのです(ただし同じ種類の個体に限ります)。
■おまけ~光るアンモナイト~
皆さんはこんなアンモナイトは見たことがありますか?
きれいですよね。ちなみにこの大きさなら、500万円ほどするそうです。
ではどうしてこのアンモナイトは光っているのでしょう。この現象はイリデッセンスと呼ばれています。イリデッセンス(iridescence)が発生するには、厚さが異なる薄い層が交互に重なっている多重構造が必要です。アンモナイトの殻の表面も、アラゴナイト層とキチン層が交互に何重にも形成されています。
この多重構造に光が干渉すると、特定の光が集合し、強め合うことで、赤、黄、緑、青などに分光します。このような干渉を、多層干渉と言います。アンモナイトの層が七色に光るのは、この多層干渉によるものです。
■最後に
いかがでしたでしょうか。化石といわれると、発掘している情景や化石が展示してある情景などが思い浮かぶかと思いますが、実は化石は数学的な側面を持っているのです。今回はアンモナイトだけの説明になってしまいましたが、このような構造は二枚貝やほかの貝化石にも数学的な特徴があるので、皆さんぜひ探してみてください。ちなみに面白いことに、江戸の主要な建造物をたどっていくと、らせんの曲線になるとかならないとか。この東京ですららせん構造の支配下にあるんですね。