[保存版] 新宿区立おとめ山公園完全ガイド

湧水好き視点

おとめ山公園

  1. はじめに
  2. 地形的解説
  3. 歴史
  4. 湧水
  5. 水質と地学部の研究
  6. アクセス
下の池

1.はじめに

 新宿区立おとめ山公園は高田馬場から徒歩7分ほどの場所にありながら、新宿区唯一の湧水が現存しています。こんこんと湧き出す清水と美しい緑は都会の喧騒を忘れさせてくれます。

今回はそんなおとめ山公園について詳しく深掘りしていきます!

2.地形的解説

 本項ではおとめ山公園を地形的に解説していきます。まずは国土地理院地図のツールから作成したこちらの3Dモデルをご覧ください。

おとめ山公園を矢印で示した

 お分かり頂けましたか?「下落合」という文字が重なっている場所がおとめ山公園になります。河川の侵食により形成された連続する崖を「崖線」と呼びますが、写真内中央を流れる神田川によって形成された崖線がくっきりと写っています。この崖線を特に「落合崖線」と呼び、文京区まで至っています。

 崖線上におとめ山公園がある。これはすなわち、園内に大きな高低差があることを意味しています。では、なぜ高低差が湧水を生み出すのでしょうか。こちらの図を御覧ください。

武蔵野礫層は黄緑で表されている

 おとめ山公園の湧水における主な帯水層(地下水が滞留している層)は武蔵野礫層になりますが、本来これは地表面から数メートル下に存在します。しかし、先程の高低差が武蔵野礫層を露出させるのです。これが、地下水が湧き出す理由です。

3.歴史

 おとめ山公園の歴史は江戸時代まで遡ります。

 江戸時代、おとめ山一帯では将軍家による鷹狩が行われ、庶民の立ち入りが禁止されていました。この時の立ち入り禁止を意味する「御留」が現在のおとめ山の由来となっています。ちなみに当時、落合地域ではホタルが有名で「落合ほたる」と呼ばれていました。現在でも近隣住民の方々が主体となってホタルの養殖を行っています。

歌川国貞 「江戸自慢三十六興」 「落合ほたる」

 明治時代に入ると徳川家が所有していたおとめ山一帯の土地は相馬家と近衛家が所有することになります。特に相馬家が所有した西側では、長岡安平によって落合崖線の高低差を利用した回遊式庭園が作庭され、現在のおとめ山公園にはこの頃の面影が残っています。

 戦後、地元の方々の保全運動により新宿区立おとめ山公園が開園しました。現在では新宿区唯一の湧水となっています。

4.湧水

上の池

 おとめ山公園は湧水が育むせせらぎが大きな魅力なわけですが、そんな湧水について詳しく書いておきます。

おとめ山公園の湧水で特記すべきは新宿区唯一であること(3回目笑)。そして東京の湧水57選に選ばれていることでしょうか。東京の湧水57選には清正井やママ下湧水など錚々たる湧水が名を連ねています。

湧水は上の池からさらに上った最上流部が、こんこんと湧き出す様子を間近で見ることができ、最もわかりやすいですが、湧出自体は園内を流れる小川に沿って北側の崖から確認することができます。

5.水質と地学部の研究

観測の様子

さて、海城地学部では13年間に渡り、週5日おとめ山公園の湧出量観測を行っています。さらに周辺の井戸をお借りした水位や水温の計測も。そんなわたしたちだからこそ分かる、おとめ山公園の湧水を全解剖していきたいと思います!

 おおよそ水質や湧出量についてはこんなところです。水温の変動が少ないのは湧水ならではといったところです。ここで2つほどピックアップして説明します。

 まず、pHを御覧ください。6.9です。そう、少しだけ酸性であることがポイントなのです。(中性は7ですね。)これは、地下に住む微生物が理由と言われています。微生物は呼吸の際に二酸化炭素を排出するわけですが、二酸化炭素は酸性です。つまり、「地下水は酸性の二酸化炭素に触れながら浸透するので酸性を帯びる。」ということです。

 続いて湧出量平均のグラフを御覧ください。が多いですね。これは、東京の季節別降水量と一致しています。つまり台風による降水量の多さが湧出量にも現れているということです。

6.アクセス

ここまで読んできて行ってみたいと思った方のため、簡単にアクセスを。

JR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線高田馬場駅 ・・・徒歩7分
西武新宿線下落合駅・・・徒歩10分
JR山手線目白駅 ・・・徒歩10分

どの駅からも、一本道が多いので道に迷うことはないかと思います。

最後に。

公園の案内は新宿区が公開しているこちらがおすすめです。

地学部のおとめ山公園での活動に興味を持っていただいた方はこちらもご覧ください。

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