歩く地層-2023日光巡検

今回の巡検では、鬼怒楯岩大吊橋、龍王峡(野岩線龍王峡駅~白岩バス停間)、五十里ダムとの順に訪れました。具体的な時間は後述します。その中でもこの記事では龍王峡を中心に説明しようと思います。

今回訪れた龍王峡は鬼怒川最上流域に位置しており、並行して走っている国道121号線はそのまま山の間の谷間を縫って福島県会津下郷町に至ります。

地元の方には申し訳ないのですが、まだ少ししか人の手が入っていない”ガチの秘境感”が、地学部員としては心地よく感じました。日光といえば東照宮や温泉などが有名ですが、元は門前町として開拓や交通が古くから発展しており、開拓の過程で景観の優れたスポットが発見されたのだろうと思います。

これまでに数多く訪れた地学スポットの中でも一位二位を争うほどに長いにもかかわらず遊歩道は整備されており、アプローチ手段もかなり便利でした。また、景観はこれまで訪れた渓谷の中で最も美しいと感じました。

ジオサイト一覧

龍王峡には地学的な見どころが多数ありました。龍王峡全体は地層が隆起してきて貫入や侵食を受けた段丘地層ですが、関東平野の大部分を形成した、比較的新しい第四紀火山の堆積物ではなく、比較的古い(龍王峡の場合は2200万年前)第三紀火山の火山噴出物が堆積した地層だといいます。

龍王峡は、2200万年前の第三紀火山の火山噴出物が安山岩、凝灰岩、流紋岩と堆積して隆起した地質構造だといいます。なので、歩いている2kmの中で3種類の地層が現れます。今回、龍王峡駅からバス停方向へ地理的には北に上がっていきましたが、地面を見ながら歩くと、北へ遡っていくにつれて地質的に古くなっていく地層を観察することができました。

凝灰岩エリアには溶岩性岩石の貫入や、教科書に載っていそうなほどきれいに形成された柱状節理が複数見られます。また、川の底を石が流れた痕跡の、ポットホールと呼ばれる丸い穴も数多くあります。龍王峡のポットホールは複数の段丘面(川の両側にある階段のような地質構造)にそれぞれあるので、河岸段丘の形成過程がはっきり理解できると思います。

これらの見どころがある龍王峡、当時の環境がわかる生物痕や、地殻変動を示す痕跡があるわけではないのでジオパークにはならなさそうではありますが、少なくとも景観がとにかく素晴らしいのでそれを見るためだけでも一度は訪れてほしいです。

日光鬼怒川巡検の行程

鬼怒川温泉9:50→10:05吊り橋など10:55→11:10鬼怒川ビジターセンター11:20→11:25鬼怒川温泉駅11:36→11:48龍王峡駅11:50→早歩き→13:29白岩バス停13:29→13:39五十里ダムサイド15:15→鬼怒川温泉駅

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